お知らせ

2024/08/08

令和6年7月度 252号(R06.07)

零細企業や個人事業は残余利益(資金)や残余利益分岐点比率に注目しよう!

零細企業や個人事業は残余利益(資金)や残余利益分岐点比率に注目しよう!


 経営分析では「損益分岐点比率」が重要視されます。 固定費 ÷ 限界利益 で計算します。

管理会計では、限界利益 を 貢献利益 と呼ぶ場合もあります。こちらの方が分かりやすいようです。


 一般に、固定費は、販売管理費+支払利息。限界利益(売上-変動費)は、販売業では売上総利益(粗利益)です。製造原価を用いる会社は、通常、原材料仕入+外注費のみを変動費とし、他の原価は固定に含めるのが多い。比率は100%以下で少ないほうが良い状態です。100%は経費が賄えるだけの粗利益が生み出されている状態です。それに見合う売上高を「損益分岐点売上高」と言い 、限界利益(粗利益=固定費)÷粗利率 で計算されます。粗利益85万円で粗利率36%ならば 85万÷36%≒236万です。
 損益分岐点比率が100%以上は赤字です。80%程度が目標点です。80%が意味するところは、売上が (100-80=)20%減少したら赤字になると言うことです。事業を行っていると売上が 5~10%減少することは珍しくないので、できれば余裕をもって20%は欲しいものです。この20%を「安全余裕率」(100%-損益分岐点比率)と呼ばれています。(損益分岐点比率+安全余裕率=100%)
 こうした分析等が行いやすくするため、一般の損益計算書を「変動損益計算書」に組み替えたりします。また、売上・原価(変動費)・限界利益(粗利益)・経費・経常利益のブロック図(ストラック図と呼ばれます)で表し、原価率や売上高などの個別要素を変動させると、どのように最終利益が変動するかシミュレーションすることも可能です。さらにそこから派生して変動率が利益に影響する度合い(感度)を示す、利益感度分析なども使われることがあります。数字は結果によるものだけでは無く、「もしもこの数字がこのように変動したら最終利益はどうなるか」など考えることが重要です。それが解れば、最優先課題は、売価の値上げか、販売数量の増加か、仕入価格の引き下げ交渉か、無駄な経費の削減か、あるいはそれらの組み合わせか、撤退すべきか否か、打つ手がより具体的になるはずです。
 ところで、零細企業や個人事業主から「損益分岐点比率」が100%以下であっても借入金の返済等で運転資金が不足し、実際どれだけ売り上げたら良いか解る指標が求められることがありました。 そこで「損益分岐点比率」の計算式の 固定費(経費)を「経費返済等支出」に修正し、
経費返済等支出=固定費(経費)+借入等返済-減価償却費+税金 
(借入の返済は経費にならないため、損益計算書では表示されません。だから加えます。また、個人事業者では生活費等も含めます) 
 残余利益分岐点比率 = 経費返済等支出 ÷ 限界利益(粗利益) 
としました。
 
 残余利益と言う言葉は一般的には使われていません。適切な言葉がないので定義しました。
「残余利益分岐点比率」が100%は資金収支が均衡するところであり、100%を切れば理論上の資金が余る状態です。残余利益分岐点売上高は、限界利益(粗利益=経費返済等支出)÷粗利率 で計算されます。目標数字はすこし厳しくなりますが、会計上の利益は出ていても、資金収支が赤字では中小企業零細にとって、望ましい状態では無いので活用できるはずです。これにキャッシュフロー計算書も併用すれば、なお良いでしょう。