お知らせ
先月に続いて分析関連の話です。一般的に損益計算書の構造は、一番上が売上高です。そこから仕入や製造などの原価を差引、売上総利益(俗に粗利益)を計算します。そこから販売費管理費を引き、営業損益を求めます。さらに、利息や雑収入雑損失等の営業外収益費用の調整を行い、経常損益を算出します。その後、特別利益や損失等の再調整を行い、税引前当期損益を計算します。個人業の場合は、営業外損益や特別損益も販管費と区別せずに必要経費に含めます。下に行くほど数値が減っていきます。
経営者の関心が強いところは一番下の利益(所得)でしょう。予想より少なかったり、赤字であることも。もし損益が100万円の赤字の場合、どうすれば、トントンになるかを問うとします。よく、利益を増やすには、売上を増やすか、原価・経費を減らすしかないと言われます。そうすると、売上を後100万円増やせば良いとか、売上だけでは厳しいので、売上50万円増と経費50万円減の組み合わせで行くとか答える人が希にいます。売上を増やすと原価や販売費の一部も増えるので結果、利益は目標に達成しません。このように収益構造が理解できていないと正しいシミュレーションが出来ないため、実現不可能な計画になったりします。本来、収益と費用の関係性は対等でなく、また、経費の重要性や優先順位も異なるものであり、経営者が理解し意図をもってコントロールするのが望ましいです。
原価や経費は、売上の大きさに比例して増減するものと、売上に無関係のものとに大きく分けられます。売上に関連の強いものを 変動費 と呼びます。卸小売業では仕入原価が変動費です。これに対し、売上との関連性がない、あるいは少ないものを 固定費 と呼びます。(変動でないという意味でです)
家賃や役員報酬・給与など、たとえ売上がゼロであっても支払う必要のあるものです。新型コロナでお客さんが減って、苦労された飲食や旅行業者などもいらっしゃるでしょう。固定費が赤字の原因です。
製造業や建設業は注意が必要です。製造原価のうち、材料費や外注費は変動費ですが、その他の多く原価は売上がゼロでも発生します。これらは固定費に含めます。このような製造原価等を組み替えた損益計算書を変動損益計算書と呼びます。通常の製造原価計算書は作成しません。
販管費は売上との関連性があるものも含まれますが、区分し難いことが多く、金額と相対的に少額であるので固定費扱いします。たまに、エクセルの回帰分析用関数を使い、変動費固定費を区分するのが正しいとか言う人もいますが、中小零細企業では、売上が半減しても半減しない支出は固定費と割りきっていいでしょう。シミュレーションの誤差が許容範囲であれば問題ありません。
変動費・固定費の区分ができると便利なことが多いです。例えば、店舗等の固定費が分かれば営業日数で割ると、1日で稼がなければならない粗利額が見えてきます。そこから、粗利率で逆算し必要な売上高が分かります。そうすると、平均客単価○○円だから何人以上で利益が出るとかが分かります。 また、営業が粗利率を知っていれば、値引きしてまで売上を増やすべきかどうかの判断も見えてきます。固定費を上回る粗利益額を稼ぎ出せばそれが利益だからです。ところで、損益計算書などのデータを社員に公開していない会社は多いです。別に経費の中身を細かく見せる必要はありません。ただ、現場では固定費(経費)がいくら必要だから、それを上回る粗利益を出すことを目標値とすれば、社員1人ひとりの具体的目標数値(売上額、数あるいは製造数量など)が明確となります。そこから、貢献度合いを考えるようになれば、仕事の役割を通した協力関係も深まることでしょう。
令和6年8月度 253号(R06.08)
なぜ経営分析では、原価や経費を変動費と固定費に再分類するのでしょうか?